【カイロ=佐藤貴生】サウジアラビア西部のイスラム教最大の聖地メッカで実施された今年の「大巡礼(ハッジ)」では、1000人以上が死亡した。AP通信が23日、各国政府当局者の話を基に伝えた。 14日から19日までの期間中、最高気温が50度を超えるなど猛烈な暑さに見舞われ、体調不良を訴える人が続出。正規の巡礼ビザ(査証)を取得せず、冷房が効いたホテルやバスを利用できなかった人々が犠牲になったようだ。 エジプト政府当局者は、犠牲者の半数を超える660人以上のエジプト人が死亡したと述べた。政府は不法な巡礼を手助けしたとして、16の旅行業者の免許を取り消した。 このほか、インドネシア人165人、インド人98人が死亡し、ヨルダンやチュニジア、マレーシアなどから来た人もそれぞれ数十人が亡くなった。英BBC放送(電子版)は、ヨルダンでは旅行業者数人が逮捕され、チュニジアでは担当大臣が更迭されたと伝えた。 ハッジではしばしば大規模な死亡事故が起きており、2015年には多数の巡礼者が折り重なって倒れる事故で2400人以上が死亡した。今年は世界各地から約180万人が参加したとみられる。サウジ政府は不法に巡礼を試みた数万人を摘発したが、詳細な人数は公表していない。 ハッジは礼拝や断食などと並ぶイスラム教徒の5つの義務の1つで、体力や財力に余裕がある信徒は一生に一度は行うよう求められている。