ことし、山口県防府市で自転車盗を繰り返したとされる男(37)の裁判。「歩いて通勤するのが、体力的にしんどかった」と話していた男に対し、山口地裁は「盗癖が根深い、身勝手な犯行」などとして、実刑判決を言い渡しました。 常習累犯窃盗の罪で判決を受けたのは、山口県防府市の無職の男(37)です。判決によると、男は常習的に自転車を盗みました。ことし3月19日午後2時ごろ、山口県防府市内の駐輪場に止められている自転車1台(時価約1万円相当)を盗んだほか、後に2度にわたって同様の自転車盗を行いました。 6月4日に、山口地裁で開かれた初公判。男は「間違いありません」と起訴内容を認めていました。冒頭陳述で検察側は、自宅から当時勤めていた山口県防府市内の工場までの通勤に使うため、自宅近くで無施錠の自転車を盗むようになったと動機を明らかにしました。 2023年8月上旬、男が通勤に使っていた自転車がパンクし、それから男は、自宅から職場まで徒歩で30分~40分かけて通っていました。「徒歩での通勤が体力的にしんどかった」と話した男。寝坊をした日に、たまたま無施錠の自転車を自宅近くで見つけ盗むと、それから歯止めがきかなくなり、出勤時に無施錠の自転車の窃盗を繰り返すようになります。自転車は職場近くに止め、帰宅時には同僚に車で送ってもらっていたことから、職場近くに盗んだ自転車がたまるようになったといいます。 男はこれまでにも、何度も自転車盗などの窃盗を行ったとして有罪判決を受けていましたが、7年以上窃盗を行っていませんでした。「なぜ今回犯行に及んでしまったのか」という弁護人からの質問に対し、男は「忘れてはいたわけではないが、自分の弱さに負けてしまった」と回答。「なぜ自転車を修理しなかったのか」という質問に「故障した自転車を修理する金がなかった」と話しました。 男には当時、妻と子がいました(現在は離婚)が、2022年11月ごろに、男がヘルニアを患ったことから、出勤日数が減って給料が減少。母親に金を借りたり、給料を前借りしたりしていました。それでも生活が厳しかったことから「故障した自転車を修理する金より、養う金を優先した」といいます。 弁護人からの「もう二度としないか」との質問に、男は「元妻と子ども、母を今後悲しませないようにしたい」と回答。検察側からの「自転車を盗むことに対する罪の意識が薄かったのではないか」との質問には「今回は家族に迷惑をかけた。これで認識が変わった」と答え、「そのときは自分が楽になろうとしか考えてなかった。今回捕まったことで妻と子どもを大切だと再認識した」と述べました。