大阪・ミナミのグリコ看板下(グリ下)に集まる若者を支援しようと、認定NPO法人「D×P(ディーピー)」(大阪市)が近くに支援拠点を設置して1年となるのを前に21日、報道陣に内部を公開した。利用者の相談内容を分析したところ、60%が家庭内での暴力や虐待を経験し、37%が大阪府以外から来ていた。家庭や学校で孤立して厳しい状況に置かれている若者が少なくなく、D×Pは近く、数百人規模のアンケートを実施して支援策に生かす。 日中は観光客らが行き交うグリ下の遊歩道。ただ、夕方以降は居場所を求めて若者が集まってくる。未成年の飲酒やけんかといったトラブルのほか、犯罪に巻き込まれるケースもある。 グリ下から徒歩5分ほどのビルにある支援拠点「ユース(若者)センター」は週2回、午後4時~10時にオープンし、D×Pのスタッフ数人が常駐。思い思いにくつろげる場所のほか、スマートフォンの充電ができるコンセント、メークをしたり交流サイト(SNS)用の撮影をしたりできるスペースもある。 目指すのは、「利用者が安心してエネルギーをためることができ、自立に向けて人とのつながりを得られる場所」。食事や衣類を提供するほか、必要に応じて面談し、病院や自治体の窓口に付き添う同行支援もする。 ■「泊まるところがない」 D×Pは令和4年夏からグリ下で定期的に「フリーカフェ」を開き、訪れた若者に弁当や飲み物、生理用品を配布してきた。より落ち着いて過ごせる場所として、昨年6月にユースセンターを開設。今年5月1日までの利用者は延べ4千人以上、1日に平均約60人が訪れる。 D×Pは、このうち70人の背景を分析。年齢は13~25歳で平均は18・1歳。大阪府内在住が多いが、それ以外の関西圏から23人、その他の地域からも3人が来ていた。女性が約7割を占めた。 60%が家庭内での暴力や虐待を経験したと説明。家庭や学校に居場所がないとみられ、医療的なケアが必要だったり、経済的に困窮したりする人もいた。今井紀明理事長は「福祉や医療、法律といった複数の専門家が連携してサポートすることが求められる」としている。 「泊まるところがない」「病院に行きたいけど行けない」「うまくいかないことがあった」…。そんな本音を引き出すため、まずは会話を重ねて信頼関係を築く。妊娠や性感染症についての相談を受ければ産婦人科などに同行し、生活の拠点がなければ住居を確保したり、生活保護受給のため自治体の窓口につないだりする。