「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の男性の遺産をめぐる注目の判決です。13億円の遺産を市に全額寄付するという遺言書について、親族が無効を求めた裁判で、裁判所は親族の訴えを退け、遺言書を有効とする判決を言い渡しました。 和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助さん(当時74)。貸金業や酒の卸売業など幅広く事業を展開して一代で財を成し、自宅には常に貴金属や多額の現金を置いていました。 野崎幸助さん 「(Q.この時計でいくらくらい?)450万円。(Q.これは1000万円あるんですか?)私はいつも7億くらい自分の家に置いている」 2016年には自伝を出版。これまでに4000人の女性と交際し、30億円を貢いだと公言。自らをスペイン演劇に登場する女性好きの人物の名前をとって「紀州のドン・ファン」と呼んでいました。派手な生活ぶりの一方でトラブルも… 野崎幸助さん 「宝石の置いているものがなくなっている。これはおかしいなと思って」 亡くなる2年前には、現金や貴金属6000万円相当を知人女性に盗まれる被害に。さらに… 野崎幸助さん 「(犯人が)目出し帽かぶって入ってきた」 翌年には貴金属など4000万円相当を奪われましたが、犯人はすぐに逮捕されました。 そんな野崎さんと2018年に電撃結婚したのが55歳年下のモデル・須藤早貴被告(28)。ところが、わずか3か月半後。野崎さんが自宅で死亡しているのがみつかります。死因は急性覚醒剤中毒でした。 野崎さんを殺害したなどとして、逮捕・起訴されたのが妻の須藤被告。殺人事件を巡る刑事裁判は始まっていませんが、その「ドン・ファン」をめぐるもう1つの裁判が。争われていたのは、野崎さんの遺産を誰が受け取るかを決める“遺言書”についてです。 野崎さんの遺言書とされるもの 「いごん。個人の全財産を田辺市にキフする。野崎幸助」 A4サイズほどの紙に赤い字で書かれた文字。野崎さんの遺言書とされるものが死後に見つかったのです。 しかし、野崎さんの親族は「遺言書の筆跡は不自然な上、田辺市に寄付する合理的な動機が見当たらない」などとして、遺言書は野崎さん以外が作成したもので『無効だ』と主張していました。 そして、迎えたきょうの判決。和歌山地裁は親族の請求を退け、遺言書は「有効」とする判決を言い渡しました。遺言書の筆跡については「野崎さん固有の筆跡や癖が認められることから、不合理な点は見当たらない」と結論づけました。 また、寄付については、野崎さんは長年、田辺市に対し寄付を行い、継続する意向を示していたことから「矛盾はない」としました。田辺市側の主張が認められた形です。 田辺市の担当者 「長い期間の裁判となったので、改めてほっとしている」 「市民全体にかえすことができる行政活動に使っていく」 田辺市民は… 田辺市民 「本人(野崎さん)の意思なら田辺市にもらってもらったら良いと思う」 「想像がつかないですね。金額が大きすぎるので。有効活用してもらえたら」 今後、親族がどのように対応するのか注目されます。