鹿児島地検は21日、警察の内部文書を漏えいしたとして、鹿児島県警の前生活安全部長、本田尚志(たかし)容疑者(60)=鹿児島市=を国家公務員法(守秘義務)違反で起訴した。 本田被告は県警の内部文書を外部に送ったことを認めた上で、県警トップの本部長が不祥事を隠蔽(いんぺい)しようとしたからだと主張。弁護人も不祥事の「内部通報」だったと強調する中、地検が悪質性をどう判断するか注目されていた。 本田被告は県警を定年退職後の今年3月下旬、部長在任中に入手した内部文書を鹿児島市内から北海道在住のフリー記者に郵送し、情報漏えいしたとして県警に逮捕、送検されていた。 県警や関係者によると、内部文書は複数枚で、霧島署員によるストーカー容疑事案の概要と被害女性の氏名、枕崎署員が逮捕されたトイレ盗撮事件に関する資料などが封書で送られていた。差出人の記載はなかった。 盗撮事件については、同時期に定年退職した前刑事部長が「(捜査せずに)静観」するよう指示したという趣旨を記載した文書も同封。県警の不祥事の問い合わせ先として前刑事部長の名前や電話番号も記されていた。 本田被告は逮捕後の5日に鹿児島簡裁であった勾留理由開示手続きの意見陳述で、フリー記者に文書を送ったことを認めた。その上で「県警職員が行った犯罪について、野川明輝(あきてる)本部長が隠蔽しようとしたことが許せなかった」と理由を説明した。 送付した文書に野川本部長に関する記載がなく、代わりに前刑事部長の名前などが記されていたことが明らかになると、本田被告は10日に弁護人を通じてコメントを発表。「送ったのが自分だと分かるかもしれないと思い、隠蔽を指示した人物の名前を変えた」などと釈明した。 本田被告の主張に対し、野川本部長は「隠蔽を意図して指示したことは一切ない」と全面的に否定。前刑事部長も「盗撮事件の捜査に携わったことはなく、野川本部長から指示を受けたこともない」とし、双方の主張が大きく対立していた。【取違剛、河慧琳】