黙秘貫く被疑者に「家族に会えないぞ」 日本の“人質司法”に異議 取調べ拒否権の確立目指す団体発足

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刑事弁護を中心に活動している弁護士有志はこのほど、刑事事件について否認または黙秘する被疑者を逮捕勾留することで自白等を引き出す「人質司法」を解消することを目指し、「取調べ拒否権を実現する会(RAIS)」を設立した。 RAISは、捜査当局による取調べの場で被疑者が黙秘権を行使しても、取調べをやめないどころか、「黙秘するといつまでも家族に会えないぞ」「保釈も認められない」などと言って、長期間の取調べを実施する実態があると批判。黙秘する意思を示した被疑者への取調べを許さない「取調べ拒否権」の法的確立を目指すという。 都内で開かれた会見で、高野弁護士は「日本の警察や検察は、逮捕・勾留中の被疑者には取調べ受忍義務があると主張しているが間違っている。憲法で保障されている黙秘権が単に口を閉ざすだけの権利であってはならない」と語った。 ●取調べ拒否権の確立で「人質司法を終わらせる」 捜査機関による被疑者の取調べについては、刑事訴訟法198条1項が次のように定めている。 「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる」 同条本文は、捜査機関が被疑者の出頭要請や取調べをできる旨を定め、同条但書では、「逮捕又は勾留されている場合を除いて」、被疑者の出頭拒否権および退去権(取調べ拒否権)を定めている。 RAISによると、例外として定められている「逮捕又は勾留されている場合を除いては」について、「逮捕勾留されている被疑者は家に帰ることはできないという『当然の例外』を定めたものであり、立法過程におけるGHQと司法省の協議会でも同様の指摘があったとする。 しかし現実には、逮捕・勾留されている被疑者には取調べ受忍義務があるとする捜査機関側の解釈が、裁判所を受け入れたこともあり、「日本で身柄拘束された被疑者は、逮捕勾留の期間(最長23日間)、連日長時間の尋問を受けなければならないという非人道的かつ恣意的な捜査方法が定着した」と主張。 「取調べ受忍義務こそ、この国の刑事司法の宿痾(しゅくあ)とも言うべき人質司法と冤罪の根本的原因」だとして、「取調べ受忍義務の廃止すなわち取調べ拒否権の確立」を目指すという。 具体的には(1)取調べ拒否権を保障する法律の3年以内制定、(2)取調べ拒否を中心とする弁護活動の定着、(3)全国民への広報活動、という3つを活動の柱とするという。 高野弁護士は、自身や仲間の刑事弁護人の経験として、取調べ拒否について依頼人へ助言したところ、「取調べ期間の短縮、不起訴処分の獲得、無罪判決の獲得に成功したことがある」といい、「取調べ拒否権を中心とした弁護活動が定着すれば、『人質司法』を終わらせ、法の支配をより確かなものにできると信じている」と強調した。 ●長時間の取調べ「日常的な光景」「これが日本の現状」 RAIS副代表を務める趙誠峰弁護士は会見で、自身が代理人をつとめるケースで、取調べで黙秘を続ける元弁護士の江口大和氏に対し、検察官が実際の取調べで侮辱的な言葉を投げかける映像を紹介した。 「ガキだよねあなたって」、「社会性がやっぱりちょっと欠けてるんだよね」、「もともと嘘つきやすい体質なんだから」などという言葉が飛び交った。この動画は2024年1月にユーチューブで公開され、大きな話題となった。 「江口さんは取調べの最初に黙秘権を行使すると宣言しましたが、その後50時間以上取調べを受けました。これが日本の取調べの現状です。決して特別なケースではなく、取調べ室の日常的な光景です。 江口さんが一言も話さなかったのは、黙秘権が保障されていたからではなく、彼に信じられないくらいの忍耐力と精神力があったからに他なりません」(趙弁護士) 趙弁護士は、2016年の刑訴法改正で「取調べの録音録画」が導入されたものの、江口氏のケースを挙げて、「それだけでは(違法・不当な取調べの抑止には)十分でないことを物語っている」と訴える。 「江口さんの弁護活動を通じて、黙秘権を保障するためには、取調べを拒否し、中断させる権利を保障する以外に道がないことを確信しました。 RAISの活動を通して、1日でも早くこの国に黙秘権が真に保障される日が来るよう力を尽くしたいと考えています」(趙弁護士)

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