【ニューデリー=森浩】インドで1カ月半に及んだ下院(定数545)総選挙の投票が終わり、4日に一斉に開票が行われる。有権者は約9億6800万人、投票所は100万カ所以上。インド政府が「世界最大の民主主義の祭典」と胸を張る総選挙は、桁違いの規模で行われた。 インドは日本の9倍の国土があり、投開票を巡る混乱防止や治安維持の観点から、総選挙は地域別に投票が行われる。今回の総選挙は7段階に分けて行われ、4月19日に始まり、6月1日に終了。下院全545議席のうち543議席が争われた。残る2議席は大統領が選出する。 国土の広さ以外にも、「有権者の居住地から2キロ以内」に投票所を設置するとの規定があり、事態を困難にする。中国との国境地帯にある北部ヒマチャルプラデシュ州では標高約4500メートルの村に世界で「最も高い場所にある投票所」が設けられる。ジャングルの奥深くに住む1人の有権者のために投票所が開設されることもあるという。 印メディアは、選挙管理委員会の担当者が「徒歩、列車、ヘリコプター、船、ときにはラクダやゾウに乗って遠隔地に投票所を設ける」と表現している。 投票は2004年総選挙から電子投票機が導入されている。有権者は投票所に出向き、機械のボタンを押して投票を行う。投開票の効率化のほか、国内の識字率が74・4%(18年時点)で文字が読めない人が多いことに配慮した措置だ。 投票機には候補者名のほか、文字が読めない人でも識別しやすいよう所属政党を表すシンボルマークが記されている。モディ首相の与党、インド人民党(BJP)のシンボルは「ハスの花」で、最大野党のインド国民会議派は「手のひら」だ。 ただ、電子投票機は「票の操作が可能だ」との批判が根強く、国民会議派幹部は紙の投票に戻すよう要求している。今回の選挙でも北部ウッタルプラデシュ(UP)州の村で、村長の息子がBJPの候補に8人分の投票を行ったことが発覚し、逮捕された。 インドは5月以降、強烈な熱波が襲来しており、北部を中心に気温が50度近くまで上昇する地域が出ている。暑さで投票率が押し下げられたとの分析も出ているほか、UP州では投票所で作業に従事していた担当者少なくとも33人が熱中症の疑いで死亡した。