近年、青少年が闇バイトに加担するケースが増えている。「闇バイト――凶悪化する若者のリアル」(祥伝社新書)の著者である社会学者の廣末登氏は、闇バイトに一度でも関わってしまうと「破滅への一方通行の道しかない」と警鐘を鳴らす。福岡県更生保護就労支援事業所長や保護司、ノンフィクション作家として多くの犯罪事例を見てきた廣末氏が、闇バイトの現状と、新年度が始まるこの時期に教員や保護者が知っておくべき注意点について解説する。 近年、闇バイトに加わった者の逮捕が相次いでいる。そうした事件報道を見て、「なぜ、すぐに捕まる無計画な犯罪に手を出すのだろうか」と疑問に思う方も多いのではないだろうか。 闇バイトとは、特殊詐欺や強盗などの犯罪の実行役、あるいは、その犯罪に関する支援に従事し、金銭的対価などを得ることの総称である。「バイト」というネーミングで犯罪性が中和されてしまっている印象があるため、とくに青少年はだまされやすいのかもしれない。 SNSなどを通じて闇バイトに応募すると、最初に、応募者の身分証明書のコピー、緊急連絡先と称して実家の住所、電話番号、家族構成や、勤務先などの個人情報の提出を求められる。これにより、応募者が犯罪性に気づいて辞めたいと申し出ても、首謀者から「実家に行くぞ」「ネットに個人情報を晒すぞ」などと脅され、犯罪を継続するよう強制される。闇バイトが減らないのは、こうした仕組みも関係している。 警察庁の犯罪統計資料「刑法犯 罪種別 認知・検挙件数・検挙人員」 によれば、2023年の強盗事件の認知件数は1361件(前年比18.6%増)で、検挙件数は1232件(前年比16.2%増)、検挙された人員数は1601人(前年比21.1%増)と、いずれも増加している。特筆すべきは少年の検挙人員数で、その数は329人(前年比40.0%増)と極めて深刻な増加率となっている。 特殊詐欺で検挙された者も、2015年以降、毎年2000人を超え、2023年の特殊詐欺の認知件数は1万9033件(前年比8.3%増)、被害額は441.2億円(前年比19.0%増)と深刻な情勢が続いている(警察庁「令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値版)」)。 こうしたデータからも、背景として闇バイトの存在が大きいことがうかがえる。