なぜ正式には「読めない」漢字を使うのか…「人気ドラマにちなんだ名づけ」に命名研究家が考えたこと

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子供にはどんな名前をつければいいのか。命名研究家の牧野恭仁雄さんは「有名人や物語の登場人物の名前をまねた『あやかり名』は安心感がある。ただし、その人物を心から尊敬できるならともかく、安易な感覚で名前をつけると結果が裏目に出てしまうこともある」という――。 ■「人気の名前」から世相がわかる 名づけは社会の鏡である――。それは名づけの専門職がいつも痛感していることである。 子に名前をつける際の親の心理というのは人それぞれなので、名前だけを取り出して、どういう親だという一般論は作れないが、ただ大きくマクロの視点から見るならば、世の中全体の名づけの発想、そして人気の名前には、社会の姿が反映される。 名前は、呼び名(音)には名づけをする人たちの「好み」があらわれ、文字には「願望・欠乏感」が表現されやすい。そして最近の名づけの発想や方法には、スマホの普及が大きく影響している。 人気の名前というのは毎年いろいろな企業や組織から発表されるが、もちろんもとになるデータによって内容、順位は違ってくる。今回はベネッセの集計にそって名づけと社会の話を進めたい。 近年の男の子の名前では「と」で終わる呼び名がずっと人気が高い。「と」の音は、「とっつく」「とっかかる」という言葉のように、勢いのある行動をあらわす。やはり男の子の名は、元気で活発な感じの音を好む親が多いのである。 一方、女の子は、ヒナ、メイなど2音の名が増え続けている。昔も例えばアイコという女の子をアイちゃんと呼んだりした。今、2音の名が年々増えているのは、はじめから愛称のように呼びやすい名にしたい、ということではないだろうか。 ■なぜ正式には「読めない」漢字を使うのか ベスト10の中で、陽葵(ひまり)、陽翔(はると)、湊斗(みなと)、結愛(ゆあ)は、辞典に記載のない、やや強引な読み方の名ではある。ただ翔の字だけは、「とぶ」と読む字だと思っている人も多く、最近は「とぶ」という読み方を載せた辞典もあらわれたので、トと読んでも間違いともいえなくなった。 いずれにせよ、読み方のわかりにくい名前というのも、はじめは音の響きが好きで思いついたはずである。ひまり、はると、みなと、ゆあ、なども呼び名としては人気が高い。 最近は、さすがに平成の時代にみられたギャグのような名前は無くなったが、呼び名としては普通の名でも漢字で書かれると読めない、という名前が増えている。正しく読める漢字があるのに、何でわざわざ正式に読めない漢字を使うのだろうか? それは物理的には、名づけのサイトや本にたくさん載っている、ということもある。しかし、それを見る人が「正しく読める名前にしたい」と思えばマネはしないはずで、やはり名づけをする親たちが、読めない名前に抵抗がない、好きだ、ということになる。 その背景にあるのは、社会というものに対する警戒心ではないだろうか。 今は個人情報がやたらに人に知られると怖い時代である。友人知人にしか読めない名前のほうが何となく安心感がある、ということが多くの人の心の底にあるのではないか。女の子の場合は特に心配なためか、読み方がわからない名前は女の子のほうに多くつけられている。

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