岸田首相の習近平への「弱腰外交」で、「問題だらけの中国」を図に乗らす結果になってしまった理由

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日、米、中3カ国の首脳らが一堂に会することで注目されていた、この秋最大の外交イベント「APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議」と、それに付随する一連の2国間首脳会議などが先週土曜日(11月18日)までに、ほぼすべての公式日程を終えた。 だが、メインイベントのAPEC首脳会議が首脳宣言でロシアのウクライナ侵攻を非難する文言も、イスラエルのガザ地区振興の即時停戦を求める文章も盛り込めなかったことに象徴されるように、総じて一連のイベントは成果に乏しい結果に終わった感が強い。 そうした中でも強い残尿感が残ったのは、岸田総理の日中首脳会談における中国の日本産水産物に対する輸入禁止措置を巡る弱腰外交だ。岸田総理が記者会見で、今さら「専門家のレベルで科学に立脚した議論を行う」ことで一致したと説明したのは、その最たるものである。中国の対応は科学的な根拠に基づいておらず、世界貿易機関(WTO)ルールに違反する暴挙とみなさざるを得ない。それにもかかわらず、日本側が改めて科学的根拠を示すというのは、あまりにも強引な中国の外交カード作りを受容することになるばかりか、お墨付きの獲得に使ってきた国際原子力機関(IAEA)の権威に傷を付けるリスクも存在する。 下がる一方の支持率が判断に影響を及ぼしたのかもしれないが、もっと早く、中国が輸入禁止措置をちらつかせていた時点で、日本の総理として、毅然とした態度を示す決断を下せなかったことなど、残念な問題がテンコ盛りになっている。 今回のAPEC関連の国際会合は、大成功と言えるものが見当たらない。冒頭で記したように、APEC首脳会議の首脳宣言は、ロシアのウクライナ侵略とイスラエルのガザ振興という2つの大きな人道的な危機に対する国際社会としての発信をできず、米国のバイデン大統領が議長宣言で「大半の参加国は、ウクライナに対する侵略を強く非難した」と盛り込むにとどまった。 また、わざわざ直前に開催することによって、その成果をAPECで誇示することを米国が目論んだインド太平洋経済枠組み(IPEF)も、交渉対象の4分野のうち、すでに今年5月に妥結していた「サプライチェーン(供給網)の強化」に続いて、今回、カーボンニュートラルを促す「クリーンな経済」と、税逃れ防止をめざす「公正な経済」で実質合意に漕ぎ付けたものの、注目の「貿易の円滑化」で米国と東南アジア諸国などの溝が埋まらず、合意ができなかった。 この「貿易の円滑化」の合意に向けた障害は、米国が厳格な労働者の人権保護や、環境の保護、国境を超える自由なデーターの移動を促すデジタル貿易のルール作りなどを求めたのに対し、東南アジア諸国の反発が根強かったという。 とはいえ、IPEFと言えば、中国に対抗する自由な経済圏を築くとの触れ込みで、米国内の反発が根強い関税の撤廃・削減を含まない新たな協力の枠組みの中に、東南アジア諸国を取り込もうとした経済連携協定である。APEC首脳会議を直後に控えた今回の取りまとめ失敗は、中国を勇気づける結果になった。

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