タリウム事件、意識不明が続く容疑者の叔母の症状とは 医療関係者が分析

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劇薬のタリウムを叔母(61)に摂取させて殺害しようとしたとして、京都市左京区の無職、宮本一希容疑者(37)=女子大生に対する殺人罪で起訴済み=が殺人未遂容疑で再逮捕された事件。現在も意識不明の状態が続いている叔母の診断結果は「非ヘルペス性重症脳炎」で、入院直後の血液からは致死量(成人約1グラム)のタリウムが検出されたが、どんな症状なのか。 医療関係者は「簡単に言うと、原因不明の脳炎だ」と指摘する。タリウムは白色のやわらかい金属で、水に溶けやすい性質がある。 タリウムを摂取すると、筋肉や神経の働きを調整するカリウムと置き換わり、カリウムの作用を阻害してしまい、臓器などの機能不全を引き起こす。 順天堂大の千葉百子客員教授(分析中毒学)によると、最初に出てくるのは吐き気などの消化器症状で、少し遅れて神経症状や脱毛に進む。脳の神経に入り込んだり、腎臓へのダメージで老廃物を排出できなくなったりすると脳で炎症を引き起こす原因にもなるといい、叔母の状況とも符合する。 タリウム中毒の治療法は早期の場合、血液の液体部分「血漿(けっしょう)」の交換や胃洗浄、活性炭を飲ませるなどして体内のタリウムを取り除く方法のほか、大量のカリウムを摂取させることで解毒する方法がある。 だが、タリウム中毒の症状は多岐にわたる。このため千葉氏は「医療現場でタリウム中毒を症状から見極めるのは非常に難しい」と話す。 和歌山県立医大の近藤稔和教授(法医学)は「中毒を疑おうとする姿勢は大事」と指摘。今回病院側が血液や尿を保管していたことがタリウムの検出につながったことから「血液などを収集し、分析に回すことが一般化すれば医療の質向上にもつながるのではないか」と話した。

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