【病む日本人 ジョーカーの時代】 信じがたい事件が続発しています。埼玉県ふじみ野市で起きた「立てこもり銃撃事件」(1月27日)は、その異常さに慄然とし、同じ医者として恐怖に身震いしました。 渡辺宏容疑者は66歳で、亡くなった母親は92歳。いわゆる「老老介護」をしていたわけですが、「生き返るはずだから心臓マッサージをしてほしい」という要求は、常軌をはるかに逸しています。精神が病んでいるとしか言いようがありません。ただ、供述では「母が死にこの先良いことがない」「自殺しようと思い、自分だけではなく先生やクリニックの人を殺そうと考えた」と言ったといいますから、犯行は計画的です。その点で、完全には病んではいません。 医者が殺されたことで、私が即座に思い浮かべたのが、大阪で起きた「クリニック放火殺人事件」(2021年12月17日)です。心療内科を営む医者と患者の計25人の命が奪われました。 事件を起こした谷本盛雄容疑者(61、死亡)は、このクリニックの患者で、はなから大量殺人を狙った犯行でした。自宅からは、それを暗示するメモや「京アニ事件」の新聞紙面も押収されています。 自分が死ぬときは他人を巻き添えにする。そうした事件を起こす人間には共通点があります。社会から疎外され、孤独感に苛(さいな)まれているということです。それが昂(こう)じて、妄想を膨らませ、最後に社会に復しゅうするのです。 谷本容疑者は、かつて優秀な板金工で、父親は板金工場を営んでいたと言います。ところが、2008年に妻と離婚すると、その2年後に工場を退職。11年4月に長男の頭部を出刃包丁で切りつけ、殺人未遂容疑で逮捕されています。元妻と子供を道連れにし、一家無理心中を企てたのです。 以後、彼は完全に社会から疎外されました。懲役4年の実刑判決を受けて服役。出所後の足取りを警察はつかめていなかったと言います。 定職につかず、遺産相続した土地や家作の上がりなどで生計を立てていたようです。しかし、それらを差し押さえられ、事件を起こす直前に暮らしていた家は、電気・ガスが止められていました。谷本容疑者は心療内科を渡り歩いていたようで、事件先のクリニックの悪口を言いふらしていたそうです。 ところで、生活保護をもらえれば医療費はタダになります。谷本容疑者は2回申請したにもかかわらず、却下されています。窮状を訴え、体調不良を訴えても相手にされなかったのです。 最近の無差別殺傷事件の犯人を映画「ジョーカー」になぞらえる傾向があります。社会から疎外され、都会の片隅で生きるピエロは、自分を疎外した人間たちを次々に殺害していきます。彼はなぜ自分が疎外されるのか理解できず、不条理なのは社会であるとし、結局、人生はすべて喜劇だと、被害妄想を膨らませます。死にたいが、同時にこの世界も破滅させたい。このような人間をはたして精神科、心療内科の治療によって治すことが可能でしょうか。 それにしても思うのは、「立てこもり銃撃事件」を起こした渡辺宏容疑者のような人間が、なぜ、散弾銃を所持できたかです。20年も前に所持が認められ、一昨年には手続きを行って更新されています。また、クリニック放火事件を起こした谷本容疑者は簡単にガソリンの携行缶を手に入れています。 携行缶でのガソリン購入に際しては、京アニ事件があまりにも衝撃的だったため、消防法が改正されました。本人確認と使用目的の確認、販売記録の作成が求められることになっていましたが、実際にはスルーでした。 いくら法で縛っても、人の心は縛れません。彼らが犯罪を起こす前に防ぐ方法を見つけ出さないと、今後、世界は本当に破滅してしまうかもしれません。 =あすにつづく ■吉竹弘行(よしたけ・ひろゆき) 1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。
2022年 2月 の投稿一覧
アジア系女性、部屋まで尾行し侵入の男に刺殺される NY市
(CNN) 米ニューヨーク市の司法当局は19日までに、アジア系米国人の女性(35)を居住するアパート6階の部屋までつけ回して強引に中へ入り込み、刃物で40回以上刺して殺害したとして25歳の男を逮捕、訴追したと発表した。 被害者の人種などが絡んだ犯行なのかは不明。ニューヨーク市警のヘイトクライム(憎悪犯罪)捜査班が捜査に加わっているのかも明らかでない。ただ、今回の凶悪な事件は、全米各地で近年起きているアジア系住民への暴力事件の増加への懸念をさらにかき立てるものとなっている。 現場は同市マンハッタン地区のチャイナタウンにあるエレベーターのないアパート。被害者の遺体は上半身が裸の状態で浴室内で見つかっていた。 同地区管轄の司法当局の訴状によると、監視映像の分析で容疑者は現地時間の13日午前4時20分ごろ、被害者がアパートに入った時、ドアが閉まらない前に後を追って中に侵入したことが判明。 階段上で一定の間隔を取りながらも女性をしつように追い、被害者が部屋のドアを開けた際に走り込みながら内部にむりやり入り込んだという。この後、アパート内の居住者は助けを求める女性の叫び声を聞き取っており、警察も女性からの緊急通報に応じていた。 警官は現場に駆けつけたが、即座に入室など出来なかったという。その理由は不明だが、容疑者は女性の声をまねて警察の助力は不要と言い張る場面もあったとした。現場から非常階段を通じて逃走を図ったものの頭上の屋根に警官がいることを見つけ、室内に引き返してもいたという。この際、容疑者が手に凶器と見られる黄色の物体を握っていることも確認されていた。 警官は容疑者がベッド下に隠れているのを発見していた。胴体や手に切り傷を負い、刃物は寝室内の引き出し内で見つかったという。 裁判所文書によると、容疑者は第1級殺人や性的暴行が目的の不法侵入などの罪で訴追された。司法当局によると、容疑者は過去に地下鉄内で他人を殴打するなどの罪に問われた経歴があるが、監視付きの釈放処分を受けていた。
石川県能美市官製談合事件 市役所を家宅捜索 金銭の授受がなかったかなどを捜査
石川県能美市の備品購入契約の入札などを巡る官製談合事件で、警察は、能美市役所を家宅捜索した。 官製談合防止法違反などの疑いで能美市危機管理課参事小谷内正人容疑者(60)と富山市の防災資機材販売会社「カワノ」取締役吉川晃平容疑者(39)が逮捕されている。 警察は19日朝から能美市役所の家宅捜索を実施した。 また、昼頃2人の身柄が金沢地検に送られた。 警察によると小谷内容疑者は、おととし、能美市の災害用段ボールベッドの購入に関する一般競争入札などで非公表の情報を吉川容疑者に漏らすなどしてカワノの取引先に落札、受注させた疑いだ。 警察は、2人の認否について明らかにしておらず、金銭の授受がなかったかなど、調べを進めている。
バンド仲間のライブハウスからギターやアンプ盗み転売 コロナで営業自粛中狙う 兵庫
知人が経営するライブハウスからエレキギター8本などを盗んだとして、兵庫県警網干署は19日、同県姫路市の無職男(62)を逮捕した。 逮捕容疑は昨年12月5日から今年1月23日までの間に、新型コロナウイルスの影響で営業を自粛していた同市内のライブハウスに侵入し、ギターやアンプなど計19点(50万円相当)を盗んだ疑い。男はこの店で演奏したこともあり、経営者とはバンド仲間で合鍵を持っていたという。 盗んだ楽器などはリサイクルショップなどにほぼ転売したといい、同署の調べに「生活費に困ってやった」などと話しているという。
あさま山荘事件50年 全国民がテレビに釘付け 最高視聴率90%
昭和47年2月19日、長野県軽井沢町の保養施設「あさま山荘」に過激派組織「連合赤軍」のメンバー5人が管理人の妻を人質に立てこもった。厳寒の中、28日まで10日間にわたり籠城。テレビ中継は最高視聴率89・7%を記録した。 長野県警、警視庁の機動隊員などが28日に突入。人質を救出し、5人を逮捕した。銃撃を受け、警視庁第2機動隊長の内田尚孝警視長=当時(47)、2階級特進=と特科車両隊の高見繁光警視正=同(42)、同=が死亡、27人が重軽傷を負った。 メンバーの母親が説得したが、発砲が繰り返され、人質の身代わりを申し出た民間人の男性も撃たれて死亡した。