カナダの首都オタワで、新型コロナウイルス対策の規制に反対するトラック運転手らの抗議デモが1週間以上続いている。6日には市長が非常事態を宣言した。 「自由の車列(Freedom Convoy)」と呼ばれている今回の抗議行動は、カナダ政府が先月、アメリカとの国境を越えて行き来するトラック運転手に、新型ウイルスワクチンの接種を義務付けたことから始まった。 参加者たちは、トラック運転手だけでなく全ての人についてワクチン接種義務化を取り消すよう、要求の範囲を拡大している。ジャスティン・トルドー首相が率いる政権への抗議にもつながっている。 オタワ中心部ではトラックやテントが通行を妨げており、都市機能が失われている。 ジム・ワトソン市長は、市内の状況について「完全に制御不能」だとした。デモ参加者が警官を数で上回っており、抗議行動が住民の安全と治安を脅かしていると述べた。 ■「状況を変える必要ある」 ワトソン市長はこの日、現地ラジオ局CFRAの番組に登場。抗議行動者らについて、継続的に「ホーンやサイレンを鳴り響かせ、花火(の打ち上げ)もやり、パーティーにしてしまっている」とし、傍若無人ぶりが増していると話した。 また、「明らかに、私たちは人数で劣っており、この闘いに負けつつある」と述べ、「この状況を逆にしなくてはならない。私たちの街を取り戻さなくてはならない」と主張した。 市長は具体的な対応策は明らかにしなかった。ただ、警察は6日、取り締まりを強化する方針を示した。抗議者を支援しようとする人を逮捕する可能性もあるという。 緊急事態を宣言することで、オタワ市は追加権限を手にする。最前線で働く人や救急サービス関係者が必要とする設備や装備を手に入れやすくなるなどする。 ■国民の多くは不支持 多くのオタワ市民は、抗議デモに反感を抱いている。 トラックがアイドリング状態で通行を妨げていることや、市立公園に仮設の木造構造物が作られていることに、不満の声が上がっている。収入の喪失や、嫌がらせや暴力を受ける恐れを指摘する人もいる。 最近のアバカス・データの世論調査では、対象となったカナダ国民の68%が抗議行動者との「共通点はほとんどない」と答えたのに対し、32%が「共通点が多い」と答えた。 警察は、過激な発言が増えているとして懸念を示している。6日には、デモに絡んで60件以上の捜査を進めているとした。「いたずら、窃盗、ヘイトクライム、物的損害」などの容疑だという。 逮捕者も数人出ている。車両も多数、押収したという。 クラウドファンディング募金サイト「GoFundMe」は、トラック運転手らへと寄せられた募金数百万ドルの取り扱いを停止すると発表した。警察が暴力事案を報告しているためだとした。 ■「必要なだけ居座る」 一方、車を長時間運転してオタワのデモに参加したキンバリー・ボールさんは、AFP通信の取材に、「私たちの自由について」抗議しているのだと訴えた。 「何人かの知人や友人が、今回の義務化で仕事を失った」と彼女は述べ、ワクチンの安全性と効果に懸念を抱いていると話した。 抗議行動の主催者側は、平和的なデモと、法律順守を約束している。同時に、「必要なだけ居座る」としている。 6日には、ドナルド・トランプ前米大統領がトラック運転手らへの支持を表明。トルドー首相を「極左の狂人」と呼び、「正気とは思えないコロナ関連の義務化でカナダを破壊した」とした。 これを受けて、アメリカの元駐カナダ大使、ブルース・ヘイマン氏はツイッターで、「アメリカの過激政治家がカナダの内政問題に口出ししている」と書き、トランプ氏とその支持者は「アメリカだけでなくすべての民主国家にとっての脅威だ」と批判した。 新型ウイルスのワクチンは重症化のリスクを削減し、副反応が出ることは極めて珍しい。カナダ国民の多くがワクチン義務化を支持している。接種を完了しているのは、対象となっている国民の約83%に上っている。 (英語記事 Ottawa declares emergency over trucker protests )