駆けつけた警察官は、思わず目を背けたという。 現場でぐったりと倒れていたのは、30代と思われる裸の男性だ。両手両足は、手錠やロープで拘束。あたりは糞尿にまみれ、異臭を放っていたーー。 1月31日、神奈川県警麻生署は37歳の長男を監禁した容疑で両親ら3人を逮捕した。捕まったのは川崎市麻生区に住む無職・横山直樹(70)、妻の順子(65)、長女・奈々子(36)の3容疑者だ。昨年5月から9月の4ヵ月にわたり、共謀して長男・雄一郎さんの手足を縛り、自宅玄関付近で監禁したとみられている。 「警察に連絡が入ったのは、昨年9月6日です。直樹容疑者が『息子が亡くなった』と110番通報。警察官が駆けつけると、雄一郎さんが全裸の状態で死亡していました。手錠やロープで両手足を拘束し、逃げられないようにされていたとか。司法解剖の結果、雄一郎さんは排泄物に含まれる細菌による感染症で亡くなったことが判明。内因性の脳出血を発症していたことも、わかっています。 調べに対し、直樹容疑者は『外に出られないようにしたのは間違いない』と罪を認めています。一方、妻と長女は『不法に拘束したとは思っていない』『なぜ逮捕されたのかわからない』と否認。警察は監禁により雄一郎さんが衰弱死したとみて、保護責任者遺棄致死の疑いでも捜査を進めています」(全国紙社会部記者) ◆17年間の引きこもり生活 現場は木造2階建ての一軒家。警察の調べによると、雄一郎さんは大学を中退した17年ほど前から、自宅でずっと引きこもりの生活を続けていた。時には大声を発し、家族へ暴力を振るうこともあったという。 「昨年5月には、裸で屋外に出て大騒ぎになったことがあるとか。それからです。雄一郎さんの監禁が始まったのは。家族が区役所に相談すると、統合失調症の疑いがあると指摘されました。しかし、雄一郎さんが医師の診断を受けた痕跡はありません。 両親は警察の調べに対し、こう供述しています。『息子を外に出して周囲の人に迷惑をかけたくなかった』と」(同前) 今回の事件の所轄である麻生署に在籍していた、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が語る。 「家族は、事件になる前にもっと行政を頼るべきでした。長男が暴れて自傷他害行為の可能性があるなら、行政の力を借りて入院させることもできたはずです。それをしなかったのは、見栄が邪魔していたのではないでしょうか。麻生区は高級住宅街が多く、比較的所得の高い人たちが住んでいます。裕福な近隣住民に知られたくないという思いが先に立ち、自分たちでなんとかしようとしたのかもしれません。 長男の健康や衛生を軽視していたのも問題です。裸で排泄物まみれになっていれば、当然、病気になります。衰弱するのは当たり前でしょう。保護責任を放棄していたととられても、仕方ありません」 家族にトラブルがあれば、見栄など気にせず最大限の努力をすべきだろう。「周囲に迷惑をかけたくなかった」という両親の言い分が、通じる訳はない。