「歌ったら逮捕」それでも歌う魂の攻防 映画『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』本編映像

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伝説のジャズシンガー、ビリー・ホリデイとFBIの対決を描いた映画『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』(2月11日公開)より、ビリー・ホリデイが「奇妙な果実」を歌い、警官に追われるシーンの本編映像が解禁となった。 地上にひとつしかないと称えられた歌声で肌の色や身分の違いを超えて当時の人々を魅了し、没後60年以上経っても、その強烈なカリスマ性が現代のアーティスト達に影響を与え続けているビリー・ホリデイ。彼女は、長きに渡り執拗(しつよう)にFBIに追い続けられた。 ターゲットとなった理由は、人種差別を告発する「奇妙な果実」を歌い続けたから。ビリーは「歌ったら逮捕する」と脅されながらも、「この歌だけは捨てない」と真っ向からはねのけてステージに立ち続けた。本作は、ビリー・ホリデイの短くも壮絶な人生をFBIとの対決に焦点を当てて描く。 ビリーを演じる歌手のアンドラ・デイは、映画初出演ながら、そのズバ抜けた歌唱力で名曲の数々をビリーが憑依したかのように歌い上げ、彼女のパワフルかつ美しい生き様を体現した演技で観る者全ての胸を打ち、「第78回ゴールデングローブ賞」主演女優賞(ドラマ部門)を受賞、「第93回アカデミー賞」主演女優賞ノミネートを果たした。 解禁された本編映像は、ビリーが合衆国から危険視されていたことがわかる本編の中でも非常に象徴的なシーン。1947年フィラデルフィアのアール劇場、満員の会場に警察が並び構える異様な光景から始まる。緊張感漂う重々しい空気の中、ビリー・ホリデイ(アンドラ・デイ)がステージに立つと会場は一気に拍手と歓声に包まれる。 「『奇妙な果実』を頼む」という声が飛ぶ中、ビリーが「奇妙な果実」を歌いだしたその刹那、警官が「やめさせろ」と動き始める。歌うことを止められていた夫のモンローを一瞥しながらも歌い続けようとしたビリーだったが、「逃げるぞ」とバンドメンバーに抱えられ、ステージを降ろされる。「私はこの歌を歌うのよ。邪魔しないで!」とビリーが激しく叫び、観客と警官がステージに押し寄せ映像は幕を閉じる。 このシーンは、観客にも白人が多くおり、ビリーが歌う「奇妙な果実」が肌の色や身分の違いを超えていかに人々を魅了していたか、そしていかに合衆国から危険視されていたかわかる本作の中でも非常に象徴的なシーンだ。 アンドラは「彼女にはまるで磁石のように人を引きつける魅力がありました。そして、彼女はその力を利用して、アメリカの人種差別の恐ろしさ、リンチについて語ったのです。彼女には人々をひとつにまとめる力があり、当時の国の体制や(人種差別という)大衆文化に反駁したから、(当局が)あれほど怖がったのだと思います」と語る。そして「この歌に刺激されて、私たちには物事を前に進めさせる力が確かにあるのだと、どうか思い出してほしい」と力強いメッセージを送っている。 1950年代、60年代の公民権運動の音楽的出発点とも言われる「奇妙な果実」。圧巻のフル歌唱を劇場で堪能してほしい。

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