新型コロナウイルスの治療薬開発事業を進めていたジャスダック上場の医療ベンチャー「テラ」のインサイダー取引に関与した疑いが強まったとして、警視庁捜査2課は4日、横浜市の建設会社社長、久保田俊明容疑者ら3人を金融商品取引法違反容疑で逮捕した。捜査関係者への取材で判明した。捜査2課は同日、テラ本社(東京都新宿区)や建設会社、久保田容疑者の自宅などを家宅捜索した。 テラ社は2020年4月27日、医療コンサルティング会社「セネジェニックス・ジャパン」(東京都千代田区、破産手続き中)と共同で新型コロナを治療する新薬開発事業を始めると発表。メキシコで臨床試験を開始したことなども相次いで公表し、事業発表前に1株150円程度だったテラ社の株価は、6月9日に約15倍の2175円まで上昇した。 捜査関係者によると、久保田容疑者らは事業が公表される前にテラ社株を購入し、株価上昇後に売り抜けた疑いが持たれている。不正な利益を得ていたとみられる。 テラ社を巡っては6月中旬に発表内容に信ぴょう性がないとの疑惑が週刊誌などで報じられ、東京証券取引所は20年7月、同社について「不明確な情報が生じている」と投資家に注意喚起した。テラ社は同12月、「メキシコでの薬事承認が得られなかった」として新薬開発事業からの撤退を表明した。 証券取引等監視委員会は21年3月、金商法違反容疑でテラ社やセネ社などに強制調査を実施。テラ社は同8月、セネ社のグループ会社が実施するとしていたメキシコでの臨床試験について「実在性の確証を得るまでには至っていない」とする社内調査結果を公表していた。【安達恒太郎、林田奈々、鈴木拓也】