罪を犯した前科者たちの更生・社会復帰をサポートする保護司の姿を描いた映画『前科者』。原作・香川まさひと、作画・月島冬二による同名マンガを映画化した社会派ヒューマンドラマで、監督・脚本・編集を手がけた岸善幸が取材に応じた。数々のドキュメンタリー番組に携わり、劇場映画デビュー作『二重生活』、第2作目となる『あゝ、荒野』が高く評価され、日本映画界の未来を担う存在として脚光を浴びる俊英が、殺伐とした現代社会に「希望と再生の物語」を届ける。 ――寄り添うことで、人生につまずいた人を救えるのか。そんなメッセージを主人公の保護司・阿川佳代の存在そのものが問いかけているように感じました。 岸 保護司というのは、保護観察の期間中に対象者と定期的に会話をしていくんですが、それぞれ罪の種類が違うし、皆それぞれの個性があるんですね。ですから、誰に対しても同じ佇まいではないし、発言も変わってくる。対象者それぞれとの距離感が、佳代のキャラクターになるんじゃないかと。保護司には(逮捕するなど)何の権限もありませんが、それが最大の魅力でもある。撮影に入る前に、有村さんとはそういったことをよく話していましたね。 ――映画のメッセージを体現する主演・有村架純さんの演技、そして存在感が印象的です。 岸 端的に言えば、おそろしく力を内在している俳優ですよね。今までラブストーリーのヒロインを演じることが多かったと思いますけど、どの作品でもさまざまな素養を示してきた。実際、佳代のようなキャラクターも的確に演じられる。想像を超えるお芝居をたくさん見せていただき、「本当に力がある人」と実感しました。