東大前3人刺傷事件で警視庁は近く、逮捕された私立高2年の少年(17)を男性(72)に対する殺人未遂容疑で再逮捕する。「東大を受験するんです」「偏差値70台だ」-。事件後、東大前の路上で取り押さえられ、大声でそう叫んだ少年。少年の言動や関係者の証言からは少年が「東大」や「医学部」に執着する一方で、成績不振に悩み、自らを追い詰めていった姿が浮かび上がる。新型コロナウイルスの感染拡大が孤立に拍車をかけた可能性もあり、専門家は「学校のサポートが必要」と訴える。 少年は成績上位の理系クラスに所属。学校関係者は少年について「勉強熱心という印象だった」とし、少年を知る同校の生徒は「非常に真面目で、成績上位だった」と話す。少年自身も「勉強は趣味」「東大医学部を目指す」と公言し、自他ともに認める「勉強の虫」だった。 だが、約1年前から成績不振で悩んでいたとみられる。昨年9月の進路に関する三者面談で、担任の教師に対し「自分の目指すところに成績が追い付かない」などと話していた。 教師はそうした少年を励ましており、両親も「特別教育熱心なタイプではない」(関係者)という。少年は自らを追い詰めていった可能性がある。 少年事件に詳しい新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)は、進学校の上位クラスにも層があるといい、「トップから転落することで激しく傷つき、トップ層と自身を比較してよりプレッシャーが大きくなった可能性がある」と分析する。 少年の通う高校は授業以外の自主活動も重視していたが、コロナ禍で学校行事の多くが中止に。午後4時以降は学校に残らないよう生徒に伝えており、生徒同士の関わりも減少していた。碓井教授は、コロナ禍以降、感情を友人などに共有できる機会が減ったとし、「生徒たちが本来であれば得られた体験が得られなかったということを自覚して学校側がサポートしていかなければならない」と訴えた。