和歌山県海南市発注の公共工事で、業者選定に便宜を図る見返りに現金を受け取ったとして、県警捜査2課などは3日、市都市整備課建築係長の木下知海容疑者(46)=有田市=を収賄容疑で、受注した田淵建築設計事務所(和歌山市)の社長、木田吉宣容疑者(48)=和歌山市=を贈賄容疑で逮捕した。 逮捕容疑は2019年5~12月、市民会館撤去や市立小中学校のトイレ改修の設計など工事4件の業者選定で同社を優先的に受注させ、建築士である自身が同社の下請けとして仕事を請け負う約束をし、見返りとして20年12月中旬に木下容疑者が木田容疑者から現金約265万円を受け取ったとされる。木下容疑者は「遊興費などに使った」と容疑を認め、木田容疑者は「賄賂とは思っていない」と否認している。県警は同日夜、市役所を家宅捜索した。 県警によると、同社は4件を計486万円で受注。その中から、木田容疑者が木下容疑者の用意した口座に現金を振り込んだとみられる。木下容疑者は市の各課が工事を発注する際、設計に関わる相談に乗り、県警は事実上、業者選定の権限を持っていたとみている。09年に入庁する前の4年間は同社で勤務していた。今回、工事を細かく分割し、1件当たりの発注額を抑えることで入札などを経ずに業者を選べるようにし、同社に工事を受注させた後、自身がその下請けとなり、設計書を作成していたという。 神出政巳市長は「職員の逮捕は遺憾で、重く受け止めている。市民の皆様には心よりおわび申し上げる」とするコメントを出した。【山口智、加藤敦久】