6年前に起きた、洋上の麻薬密輸事件から、中国政府への情報提供疑惑が浮上している。 2016年2月、鹿児島県沖から大量の覚醒剤を密輸入した疑いで、暴力団組員ら4人が福岡県警に逮捕された。その事件に関与した暴力団員が、中国人スパイと疑われている人物に情報を流していたというのである。 組織を抜けて5年以上が経過し、現在は一般人として生活する元組員が筆者に、「組員のひとりが、麻薬取り引きの過程で分かった洋上の取り締まり情報を、中国人スパイに高値で売っていた」と明かした。 「麻薬の洋上取り引きは主に北朝鮮やベトナムの船が相手で、東シナ海の領海法で取り締まりの甘い場所やレーダーの届きにくいところを狙って取り引きされていました。どこが取り締まりが厳しく、どこが甘いか、そうした情報は、中国にとっても欲しい情報のようで、日本にいる中国人スパイが、高額な金で定期的に情報を買っていました」 実際、この元組員もそのスパイと会ったことがあると言う。 近年、中国が東シナ海において、秩序を乱してまで資源開発を活発化させているのは周知のとおり。その影響もあり、大量の中国漁船による尖閣周辺での違法操業も横行している。中国側にとっては麻薬取り引きの“穴場”も、海洋戦略上の貴重な情報となっているというのだ。 6年前の事件では、約100kg、末端価格にして70億円という大量の麻薬を密輸して、暴力団・山口組から分裂した神戸山口組の中核団体、山健組の組員らが多数逮捕されたが、逮捕者の中には、遊漁船で薬物を運搬していた協力者の漁師もいた。 こうした面々のうちのひとりと中国人スパイが接触していたというのであるが、「ほかにも、地元の海に詳しい人間と次々接触していた」と元組員。 「この中国人は、「情報バイヤー」とも呼ばれていました。表向きは中国からの輸入食材を中華料理店に卸している会社の役員を装っていましたが、会社にはほとんど出社なんかしていませんでした。そもそも食材にも詳しくなかったんです。 もとは中国での違法行為を取り締まる海警局の職員だったらしく、巡視船を操縦したことがあると本人が言っていました。だから航海用海図も頭に入っていて、天気とか海流・潮流についてもかなり詳しかった。麻薬事件以降は、事件に関わった人たちの周辺からは姿を消したようですが、まだ日本にはいるというウワサです」