「不存在」のはずの証拠、検察が最高裁で開示 贈収賄事件の再審請求

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静岡県の旧天竜市(現浜松市)の元市長から現金を受け取り、大学の推薦入試に必要な元市長の親族らの調査書を改ざんしたとして、加重収賄罪などで2010年に有罪が確定した県立高校元校長の再審請求審で、検察側が約6年前に地裁の審理で「存在しない」としていた証拠を、最高裁の特別抗告審になって開示した。弁護側が3日、明らかにした。弁護側は「裁判所の証拠開示勧告を受けながら、今さら見つかるのは検察として大きな問題だ」と批判している。 確定判決によると、旧県立天竜林業高校の北川好伸元校長(73)は06年、中谷良作元天竜市長=贈賄罪で有罪確定=から現金20万円をもらった見返りに、生徒2人の調査書を担任らに改ざんさせたとされる。元校長は無罪を主張したが、「現金を渡した」とする元市長の供述などを基に、懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金20万円の判決が最高裁で確定した。その後、元市長が「供述は虚偽だった」と証言を翻したため、元市長の説明を新証拠に14年4月、静岡地裁浜松支部に再審請求した。 弁護側によると、地裁浜松支部は15年夏、元市長の取り調べメモを証拠開示するよう検察側に勧告し、検察側がメモを開示した。この際、検察側は「他に証拠はない」と説明していた。だが、今年1月31日、逮捕前の警察での任意の取り調べのメモなどが開示された。検察側は「証拠の精査が不十分だった」と説明し、弁護側に謝罪したという。 新たに開示されたメモは、元市長が調べに否認したり認めたりと供述が変遷する内容といい、弁護側は「虚偽自白を裏付ける証拠だ」と主張。地裁浜松支部の段階で開示されていれば、再審開始が認められていた可能性があるとしている。 最高検は「証拠の内容を踏まえても再審請求を認めなかった浜松支部の判断は揺らがない」とする意見書を、1月31日付で最高裁に提出した。【遠藤浩二】

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