スパルタ教育や親の過干渉が、「教育虐待」と呼ばれていることを知っているだろうか。 児童虐待は、「身体的虐待」「性的虐待」「心理的虐待」「育児放棄」の4つからなるとされているが、少年犯罪などの現場に身を置くと、第五の虐待ともいえる「教育虐待」の実態を目にすることが少なくない。 これまで教育虐待は様々な事件を引き起こしてきた。まずは、2018年3月に滋賀県で発生した「医学部9浪女子、母親バラバラ殺人事件」を見ていきたい。 この事件の犯人は、桐生のぞみという女性だった。彼女は、両親の下で一人娘として育った。 小学生の頃に、父親が社員寮に一人で移り住み、事実上の別居状態となる。これによって、のぞみは母親と二人で生活することになった。 母親は高卒だったが、学歴コンプレックスがあったらしい。娘にいくつもの教材を買い与えて勉強させ、将来は医学部に進学して医者になるように言い聞かせた。指導はかなり厳しかったという。 当初、のぞみは言われるままに医者を目指した。だが、中高生時代になると成績が伸び悩んだ。本人の能力が追い付かなかったのか、過度な指導に嫌気が差したのか、母親にどれだけ叱られても成績は上がらなかった。 それでも母親は、娘に自分の選んだ国立大学の医学部を受験させた。結果は、不合格。母親はその現実を受け入れられず、親戚など周囲には「娘は合格した」と嘘をついて回り、のぞみにはひそかに浪人して何が何でも同医学部に合格するよう命じた。