テレビ朝日系で現在放送中のドラマ『相棒 season21』の元日スペシャルが放送される。 『相棒』の元日スペシャルは『season4』から長年続いている恒例の特別番組。『season20』のスペシャルでは、当時の相棒だった冠城亘(反町隆史)の姉(飯島直子)が登場し、冠城のことを「わーくん」と呼ぶ場面が見られるなど、お正月らしく、いつもの『相棒』よりもちょっとゆるく、クスッと笑える雰囲気があるのが特徴的だ。 しかしながら、毎回、事件の内容はしっかり重い。今回の事の発端は、全国の美術館での窃盗事件。この事件の解決に貢献したのは、右京(水谷豊)と亀山(寺脇康文)が所属する警視庁ではなく、“捜査権のない民間の探偵社”・「熟年探偵団」だった。 そんな中、元与党政調会長で、政界に多大な影響力を持つ大物衆議院議員・袴田茂昭(片岡孝太郎)の屋敷に、「邸内の金塊を盗む」という不穏な予告状が届く。とある事情から警察に介入されたくない袴田は、後継者として修行をさせている息子・茂斗(森崎ウィン)を通じて、「熟年探偵団」に捜査を依頼する。一方、「熟年探偵団」に興味を持った右京と亀山は、探偵事務所を訪問。するとそこには偶然にも、茂斗の姿が。双方をマークすることにしたふたりは、図らずも探偵団と金塊盗難予告の捜査で競うことになってしまう。 実は袴田は、『season20』スペシャルにも登場した曰く付きの人物。子ども政策に熱心な国会議員であった袴田だったが、自身に関わる疑惑を暴こうとした、最高裁判所の判事や判事を襲っているところを目撃した子どもたちまでもを秘書を使って抹殺しようとしていたのだ。右京にはそのことを見抜かれていたが、袴田は当時の秘書に罪をなすりつけることで逮捕起訴を免れていた。そんな袴田も関わる中、キーパーソンと目されるのは、袴田の息子・茂斗だ。 茂斗を演じる森崎は、10歳で日本に移り住むと14歳でスカウトされ芸能界入りを果たした。2018年にはスティーヴン・スピルバーク監督作『レディ・プレイヤー1』で主要キャストに抜擢され、ハリウッドデビューもしている。最近では、抜群の歌唱力を生かし、特にミュージカルを中心に活躍。『ウエスト・サイド・ストーリー』Season2や『ジェイミー』、『ピピン』といった名作に出演している。2023年には話題作のミュージカル『SPY×FAMILY』にロイド・フォージャー役として出演することが決定しており、これからの活躍がますます期待されている。 ドラマや映画にも数多く出演している森崎には、登場しただけで目が奪われてしまうような存在感がある。その優しくもあり、爽やかでもある雰囲気と容姿端麗という言葉が似合うビジュアルは、ペルーとフランスの血を継いでいるピアニスト(映画『蜜蜂と遠雷』)や、双子の妹の心配をしつつも、テキパキと仕事をしてみせる、デキるビジネスマン(ドラマ『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』(テレビ朝日系))という役などにはぴったりだった。 一方で森崎は、男たちの友情と熱き闘いを描いた『HiGH&LOW』シリーズの中のドラマ『6 from HIGH&LOW THE WORST』(日本テレビ系)で、かつての友人を執拗に付け狙う男を演じているのだが、この男が本当に“異様”なのだ。登場しただけで、場の空気がガラッと変わり、不穏なものになる。友人への執着心を拗らせ、武器を手に持ちながらニヤつくその顔は、イメージしていた森崎とは全く異なっており、彼が演じていると知った時には心底驚いてしまったほどだ。 今回の『相棒 season21』元日スペシャルでは、議員の後継者として育てられている息子を演じる森崎。いい顔だけではやっていけない世界だ。当然、裏の顔もあるだろう。その裏表を彼がどのように演じるのか。この点も、いつもより長い2時間ドラマの中の注目ポイントにしてほしい。